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論文「北海道倶知安町におけるグローバル不動産投資と自治体経営」 [著書・論文]

先日、大月短期大学紀要『大月短大論集』第46号(2015年3月)が発行され、拙稿「北海道倶知安町におけるグローバル不動産投資と自治体経営」が掲載されました。

北海道倶知安町は日本有数のスキーリゾートである「ニセコ」を擁する自治体です。その倶知安町は、今や注目すべきグローバル不動産投資に湧く自治体の一つです。オーストラリアや香港の外国資本による不動産投資が活発化し、特に2002年以降、大型高級コンドミニアム建設や一戸建て別荘建設が進んでいます。冬期スキーシーズンを中心に大勢の外国人スキー客が1週間単位でコンドミニアム等に滞在し、にぎわっています。先日、国土交通省が発表した「地価公示」でも、この倶知安町の地価上昇が注目されていました。

本稿は、第1に、そうした不動産投資が活発化した2000年以後に人口増加トレンドを確認し、第2に、不動産投資による土地および上物の市場価額上昇にともなう倶知安町の固定資産税(自主財源)の増収インパクトが2008年以後に確認される点を明らかにしました。特に人口減少に一定の歯止めがかかったことの主要因に、グローバルな不動産投資ビジネスの高まりがあり、これは今後の自治体経営の発展モデルとして注目すべきと、主張しました。

倶知安町総務部総務課財政係の方にはデータ提供等でお世話になりました。この場でも御礼を申し上げます。


地方創生、経済産業省の「ローカルマネジメント法人」を考える(その2) [地域再生・まちづくり]

 1月29日に書いたブログ「地方創生、経済産業省が「ローカルマネジメント法人」(仮称)を検討」のシリーズ続編です。

 その前回ブログでは、「株式会社に近いかたちで法人格を付与することは、有効な手段である。少なくとも公共性の名の下で市場メカニズムを排除することは、今後の地方経済の再生を考えると、衰退をみずから招くことにほぼ等しい。」と書きました。

 反復になりますが、そう書いた背景には、公共部門であれ民間部門であれ人々の暮らしを支える豊かな地方経済の持続発展には、市場経済的なネットワークへの「アクセス力」が必要不可欠であって、その「アクセス力」は今やグローバルな範囲に広がっているという基本認識があります。地方自治体や地域レベルでの豊かさや持続発展は、地球規模での資本や人材の市場経済ネットワークに自らアクセスし、調達するためのチャンネルや魅力をどれだけ豊富に提示できるかで決まると考えられます。航空行政の規制緩和「オープン・スカイ」ならぬ、「オープン・コミュニティ」という感じです。

 つまり、日本の人口減少や地方創生をめぐる諸問題は、今や「内政課題」ではなくグローバルな視野での「外政課題」として捉えるべき時代といえます。むしろそう考えたう上で、各自治体ごとにアイデアを集約実践することにより、人間社会の基盤としての地方経済や地域コミュニティを豊かにする可能性や政策を引きだせます。国も、そうした考え方に立って地方自治体の政策立案や実践体制を支援することが重要といえます。

 とすれば、前回ブログで取り上げた経済産業省による「ローカルマネジメント法人」の政策理念や枠組は、注目すべき第一歩です。もちろん一気に「外政課題」としてグローバルなステージで勝負するのは厳しいので、従来のように「内政課題」として捉え、国の支援をいい意味で原動力にして地方経済や地域コミュニティがより多くの選択肢を得られるようにすべきです。公共部門における法人格付与は、意欲のある自治体が、国からの財政支援を信用担保の一つに組み込む形での財政資金の調達を可能にし、自由度の高い公共サービス提供体制を構築できる可能性を秘めています。

 そこでアメリカの事例を考えます。
 アメリカでは、公共部門に対しては元来「小さな政府」という社会的制約があります。また州や地方政府レベルでは「均衡財政」を基本原則とし、さらに日本の地方交付税交付金のような国による財政調整制度が存在しません。したがって日本と違ってアメリカでは地方経済や地域コミュニティの持続発展は常に民間主導にならざるをえません。しかしそのアメリカ的な制約や財政ルールが、法人格付与による、市場経済メカニズムを活用した、規律と自立の地域政策を生み出す環境形成につながっています。

 その象徴が、州が、地方政府に付与する法人格です。
 アメリカの地方政府は法人格を付与されているincorporatedと、それが付与されていないunincorporatedに分類されますが、前者は地方政府としての強い独立性を有する法的根拠としての法人格付与であり、独立性を有する反面、いわゆる財政破綻のリスクを負います。最近ではデトロイト市が事例にあります。

 またアメリカでは、一般行政を担う市やカウンティだけでなく、州立大学や交通公社(anthority)にも法人格を付与し、目的税の課税権を委譲したり、資源配分や資金調達の自由度を与えるのが一般的です。州立大学であれば、自主財源にあたる授業料収入や学生寮使用料、さらに連邦研究開発費の間接費収入、そして州政府の補助金を信用担保にして、キャンパス校舎の増改築(資本改善事業)を行います。これは法人格を有する、公共性の強い州立大学という組織機関が持ちうる市場経済へのアクセス力を物語っています。

 そうした市場経済の恩恵を受けるのは、その州立大学で教育サービスを受ける学生であり、彼らを含む広く州内の納税者です。

(参照)
●加藤一誠・塙武郎(2014)「アメリカにおいて地方政府が交通に果たす役割 -特別区と学校区を中心に」一般財団法人・運輸調査局『運輸と経済』2014年7月号:特集「アメリカ合衆国の交通事情」。
●塙武郎(2012)『アメリカの教育財政』日本経済評論社。
●塙武郎(2010)「アメリカ大都市の交通財政 ―ニューヨーク・シカゴの事例研究」渋谷博史・塙武郎編著『アメリカ・モデルとグローバル化Ⅱ ―「小さな政府と民間活用』第5 章所収、2010 年、昭和堂。
●塙武郎(2004)「現代アメリカ高等教育財政の研究」(筑波大学・博士論文)。