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ニューヨークの地下鉄、アッパーイーストの再開発 [都市交通]

巨大都市ニューヨークを、文字通りその地盤から支える地下鉄システム。その地下鉄の路線網の拡大は、まさに成長著しいニューヨークの今を映し出します。

現在進行中の地下鉄MTA「Q」線の延伸工事はその象徴です。Q線はニューヨークのクイーンズ区、マンハッタン区、ブルックリン区をつなぐ主要路線の一つで、ニューヨーク最大の観光スポット「タイムズ・スクエア」駅を擁します。通勤通学はもちろん世界のインバウンド観光客が利用するこのQ線は現在、「96st」駅まで延伸する大規模工事を進めています。
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ニューヨーク市でも都市再開発の著しい「アッパーイースト」地区はミドル層が多く、彼らの多くは自宅近くでまずバスに乗り地下鉄4、5、6線に乗り換えて通勤するのが一般的でしたが、このQ線の延伸工事が完了すれば、アッパーイーストからウェストサイド、ミッドタウン等への通勤が飛躍的に改善されます。

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この日、工事の進捗状況等を視察した際にお世話になった現場監督者の方です。
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大都市ニューヨークの成長と利便性追求を象徴するこの地下鉄Q線の延伸工事は、ニューヨークが抱える大きな内政課題も含んでいます。次回はその課題について書いてみます。

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シアトルの都市交通 [都市交通]

2013年夏、シアトルで開催されたワシントン州交通局主催の公共交通カンファレンス(2012 Public Transportation Conference)に参加しました。そこでは路面電車のさらなる延伸をどう進めるかが最大の議論の一つになっておりました。

まずはシアトル都心部(ダウンタウン)にあるセーフコフィールドのすぐ脇を走る鉄道の様子から。アムトラック等の旅客列車も走りますが、主に貨物列車が走ります。
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元々シアトルは全米でも公共交通の先進都市として知られており、とりわけバス が非常によく発達しています。ただし都市交通システム全体の「広域化」と「大量 輸送化」という交通政策にとって宿命的な課題が残されていました。その問題解 決策として、1990年代から、既存のバスと併用リンクさせるする形で、軽量の路面 電車という新交通システムが整備されたわけです。

ダウンタウンとタコマ国際空港を結ぶ路面電車。
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アメリカはクルマ社会かつヒコーキ社会です。それはシアトルも変わりません。シアトルを含むアメリカ大都市では、 空港からダウンタウンへどのように人間(旅客)を運ぶかが重要な都市政策や都市財政の問題、そして政治問題になります。そしてバス、電車、車(レンタカー)の3者の交通モード間のバランス調整、あるいは選択が重要なイシューとなり、各モード別と複数モード混合などの費用便益 分析(cost-benefit analysis)が経済学者など公共政策論の専門家によって行われます。

その費用便益分析によって導き出された結論が下の写真です。廃線となった貨物鉄道の跡地を利用した路面電車の整備、つまり資本的経費の大幅な圧縮を前提とした路面電車の整備だったのです。大局的に言えば、「貨物から旅客へ」という政策シフトといえます。
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加えて、冒頭で述べたシアトル都市交通の顔ともいうべき「バス」の専用レーンも路面電車のスグ脇に設けることによって、路面電車とのリンケージ(シームレス化)を実現しました。
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シアトルの事例は、あくまでそれ固有の事例です。これが普遍的な回答ではありません。しかし、都市部における廃線の跡地利用の問題は結局、「直線」の空間利用が前提条件になります。したがって交通事業での再利用が州、自治体、交通公社、そして利用者(納税者)全体にとって便益の最大化になるかも しれません。
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廃線跡地の利活用 [都市交通]

 現在、横浜市等は東急東横線の旧高島町駅~桜木町駅間の廃線跡地利用について検討中です。

下の写真は、その東急東横線にある「旧高島町駅」付近の様子です。ここに駅がありました。奥側レーンはJR根岸線が走行中です。手前側レーンが旧東急東横線で、ここをどう利用すべきかが検討されています。
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旧東横線のレーンを拡大。幅は8メートル前後。
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 なお、すでに東急東横線の旧東白楽駅~横浜駅間では緑道や遊歩道に生まれかわっており、旧高島町-桜木町間の再開発事業にとってそれは参考になります。ただしこの東白楽ー横浜駅の区間は「高架橋」ではなく、「路面上」です。折角の再開発事業ですから、前者とは異なる別の発想・アイデアによる利活用モデルを実践したいものです。

シアトルで交通学会 [都市交通]

シアトルに10年ぶりに来ています。ワシントン州政府交通局の主催するカンファレンスに参加するためです。カンファレンスは3日間あり、様々なセッションが行われています。シアトルは全米でも公共交通、とくにバスが発達している都市でよく知られています。近年はバスに加えて路面電車の整備も急速に進められており、今回のカンファレンスも路面電車に関するテーマが注目されます。

カンファレンスの様子は、こんな感じです。明日は、カンファレンス最終日です。それにしても、シアトルは涼しくて最高です!
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CTAの高架橋の老朽化 [都市交通]

 戦後アメリカで公共交通が衰退した最大の理由は、1960年代以後のモータリゼーションの激化と連邦政府の補助金削減にある。これは、アメリカ社会の在り方を実にうまく映し出した「衰退」であり、興味深い。

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シカゴCTAの高架橋(都心部のLoop)

 特に連邦補助金の削減はアメリカ地方自治において深刻な状況をもたらし、公共交通を存続させるには新たな税負担が必要不可欠であるかを、納税者に理解を求めるものとなった。なかでも1970年代は全米の公共交通の多くがこの問題に直面し、かろうじて存続の道を選択したのである。シカゴ市公共交通機関CTAは、典型例であった。

 現在、連邦補助金は、「TEA21法」(交通平等法)という連邦法を根拠に全米の大都市の公共交通機関(地方政府)を中心に交付されている。これは、簡単に言えば駅舎内でのバリアフリー化等を推進させる補助金である。しかし、この連邦補助金を受取るには、条件がある。CTA自身も、それに係る費用の一部を自己負担しなければならないのである。CTAにとってこれは財政負担の増大となる。

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シカゴ都心部にあるCTA高架橋(改札口)への階段。屋根に注目。

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階段を上ったところの様子。さらに階段を上がればプラットホームへ。

 CTAの保有する駅舎の多くは、バリアフリー化が全く進んでいないものが目立つ。それはCTAが財政難である意外、理由は見当たらない。CTAの資本会計の財源をみると、連邦補助金が7割、残りはイリノイ州補助金。州補助金の拠出根拠は、Illinois Firstという州法であり、これは時限立法である。州政府が引き続きインフラ整備の補助金を拡充する意思決定をしない限り、CTAの駅舎等のバリアフリー化は連邦補助金に依存する結果となり、事業ペースの低下が予想される。今後イリノイ州議会がどう判断するのかが注目である。


シカゴの公共交通 [都市交通]

シカゴの都心から郊外へ。〜中距離鉄道、Metra〜。

人気ドラマ『ER 救命救急室』はシカゴを舞台としている。このドラマのシーンに何度か姿を現すのが、シカゴ都心部から郊外へ抜ける中距離鉄道、Metra。主人公の医師マークは、このMetraで自宅のあるシカゴ郊外から職場(病院)のある都心部へ通勤している。
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シカゴ都心部にあるMetraのLaSalle Street駅の様子。

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正面のドアから入ると、内部はこんな感じです。

 さて、このMetra。すでにこのブログで紹介したCTA(シカゴ市内で電車とバスを運営する公共交通機関)と同様、公共交通機関である。つまり、税金が投入されている。運営財源の一部は売上税で賄われている。

 実は、CTAも、Metraも、親組織RTA(Regional Transportation Authority)の管理下にある。このRTAとは、イリノイ州法であるRTA法(公共交通法)によって1974年に設置された地方政府。州政府から毎年度、補助金(補助金額は売上税収25%分としている)を受取っているが、高度に独立した運営権限が移譲されている。売上税の課税権も、地方債を発行する財政権限も移譲されている。

 郊外は、高・中所得者層の居住地域。逆に都市部は貧困層の居住地域。地域間の経済格差は著しい。したがって大ざっぱに言うと、Metraは高・中所得層が、CTAは貧困層が、それぞれ利用していることになる。『ER』で医師マークがMetraで通勤するシーンは、そうしたアメリカ社会の一側面の描写だったのである。

 車社会シカゴでも、公共交通機関Metraで通勤する高・中所得者は、意外に多いようである。
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同駅のプラットホームで出発を待つMetra(最後尾)。

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車両の側面にある「Metra」のロゴ。

シカゴの公共交通と財政難 [都市交通]

シカゴ市の公共交通機関CTA。CTAの財政状況は構造的に厳しい。CTAの2003年度の年次財政報告書(実績値)によると、営業会計(人件費、燃料費、減価償却費、資本費、リース費等の経常的経費を管理する会計)では6億8千万ドルの赤字を計上している。

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老朽化が激しいCTA電車の橋梁の様子。

営業会計における構造的な資金ショートはもちろん問題だが、この営業会計の仕組みから、ひとつ興味深い示唆を得ることもできる。それは、CTAが路線サービスを享受するシカゴ市民(シカゴ市全域)からRTA売上税(日本の消費税に近い)と呼ばれる「交通目的税」を課税している点にある。

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CTAの電車の様子。

日本では、国が道路建設を行うために徴収する揮発油税や自動車重量税などが目的税として知られるが(現在は一般財源化されている)、分権国家アメリカ、州の下部組織としてのRTA、つまり地方自治体としての交通公社がこれを徴収している。つまりシカゴ市民は税負担をしてでも公共交通の維持存続を選択したことを意味する。「車社会」アメリカにしては意外とも言うべき地方税の活用事例であり、注目に値する。なお同目的税は1974年に住民投票を通じて導入された。

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CTA電車の内部の様子(午前10時頃だったでしょうか)。乗客はこの車両には私とご老人だけ。

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シカゴ都心部のClark/Lake駅改札口の様子。乗換駅とあって利用者は多く駅舎の改築改修工事をしたいが、赤字の営業会計では限界がある。

さて冒頭で述べた6億8千万ドルもの営業会計の赤字。実はこの赤字、ある財務的なオペレーションによって最終的に黒字に転換するのである。それは果たしてどのようなものか。次回に続く。
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